「電子基準点日々の座標値(F5解・R5解)」の公開
- 国土地理院では、電子基準点で受信した測位衛星の信号(観測データ)を解析して、電子基準点の座標値を求め、1996年3月21日以降の「電子基準点日々の座標値(F5解)」及び2021年4月1日以降の「電子基準点日々の座標値(R5解)」を公開しています。
- 「電子基準点日々の座標値(F5解)」は観測した週の約2~3週間後にIGS(国際GNSS事業)から公開されるIGS最終暦(Final Ephemeris)を用いて計算される座標解を、「電子基準点日々の座標値(R5解)」は、観測した日の2日後にIGSから公開される速報暦(Rapid Ephemeris)を用いて計算される座標解を指します。
「電子基準点日々の座標値(F5解)」は毎週月曜日又は火曜日に2~3週間前の1週間分が更新され、「電子基準点日々の座標値(R5解)」は毎朝、2-3日前の解析結果が更新されますが、IGSから公開される暦が遅れた場合は、解析結果の提供が遅れることがあります。その他、再解析等を実施することもありますので、トップページの「お知らせ」をご確認ください。
- F5解・R5解は電子基準点データ提供サービスの「FTPによるデータ取得」からFTPで取得が可能です。
FTPユーザ登録がお済みでない方は、ユーザ登録を行ってください。
なお、F5解は電子基準点データ提供サービスの「電子基準点日々の座標値」から取得することもできます。
- F5解・R5解は、旧版であるF3解・R3解と比較して、主に次のような違いがあります。
・準拠する測地基準座標系が、F3解・R3解はITRF2005(IGS05)に準拠していましたが、F5解・R5解はITRF2014(IGb14)に準拠します。
・解析に使用する固定点の解析方法を変更しました。この変更に伴い、F5解・R5解は、F3解・R3解に比べ2-3cm程度系統的に移動します。
・対流圏遅延の推定手法を変更しました。これにより、高さ成分のばらつきが減少します。
・近年打上げられているGPS衛星(Block III)の信号は、F3解・R3解では解析することができませんでしたが、F5解・R5解は解析できるようになりました。
- F5解の解析設定、精度評価に関しては、出典を御確認ください。なお、専門家向けに設定ファイルをFTPサイトで公開しています(英語)。
ftp://terras.gsi.go.jp/data/coordinates_F5/DOC/GSI_F5.acn(FTPユーザのログインが必要です)
図1.F5解、F3解、IGS解の座標時系列変化グラフ(IGS観測点「TSKB」(茨城県))。2016年1月1日のIGS解を基準とした成分変化を示す。F3解はIGS解と2-3cm程度のギャップがあるが、F5解では解消されている。
図2.F5解、F3解の基線変化グラフ(高さ成分)の比較。基線ベクトルに使用した観測点は小松(石川県)→三隅(島根県)で、線形トレンドを除去している。高さ成分のばらつきが軽減された(RMSは、5.9mmから5.2mmに減少)。
- 速報解と最終解は解析方法が異なるため、両者の間には差が生じます。解析方法の主な相違点は以下のとおりです。
衛星の軌道情報(暦)の違い
観測データの解析には、観測した衛星の軌道情報(暦)が必要です。
R5解はIGSから観測した日の2日後に提供される速報暦を用いて計算していますが、
F5解はIGSから観測した週の2週間後に提供される最終暦を用いて計算しています。
解析固定点座標の安定性の違い
「電子基準点日々の座標値」の解析では、基準とする電子基準点を1点選び、その点(解析固定点)の座標値を固定して、他の電子基準点の座標値を求めます。
固定点の座標値は、その日の海外のIGS観測点を基準とする解析で算出した座標値です。ただし、観測から2日後に計算する速報解は2~3週間後に計算する最終解と比べ、解析時に使用可能な海外のIGS観測点の観測データが少なくなります。
したがって、解析に使用する観測点が少なくなり、最終解に比べ、座標値のばらつきが大きくなる、あるいは外れ値(異常値)が発生する可能性があります。
- 御利用にあたっては、国土地理院コンテンツ利用規約に同意の上でお願いします。
- 測量成果とは異なる基準に基づいているので、地図作成や測量のための基準値としては利用できません。
公共測量には、当該基準点の測量成果を御利用ください。
- 「電子基準点日々の座標値(F5解)」と「電子基準点日々の座標値(R5解)」は解析方法が異なるため、同じ電子基準点・同じ解析日でも座標値が異なります。両者を混用しないよう御注意ください。
F5解とR5解を比較する場合は、電子基準点間の相対的な位置関係(基線ベクトルや基線長)で比較してください。
- 様々な誤差が含まれます。
「電子基準点日々の座標値(F5解・R5解)」には、様々な原因(気象の変化、電波の受信障害など)による誤差が含まれています。こうした誤差については、「電子基準点日々の座標値」を地殻変動の研究等に利用される方へ
を御参照ください。なお、F5解・R5解に更新されたことにより、これらの誤差が軽減されるかどうかを一概に評価することはできませんが、解析に使用された品質点検ソフトウェア等も更新されたため、F3解で解析された電子基準点の観測データがF5解では解析されない、あるいは、F3解で解析されなかった電子基準点観測データがF5解で解析されているものもあります。
- 再解析を実施することがあります。
「電子基準点日々の座標値(F5解)」の解析にはIGSから公開される電離層高次項補正ファイルを使用します。このファイルの公開が遅れた場合、電離層高次項補正を適用しない解析結果をアップロードし、ファイルが公開され次第、再解析を行います。
電離層高次項補正の適用の有無による座標値への影響は平均的には水平成分0.2mm以下、上下成分0.3mm以下ですが、ごくまれに数mm~数cm程度に及ぶことがあります。
また、通信回線の障害等により、F5解・R5解を計算する際に特定の電子基準点観測データを取得できないことがあり、その場合は後日データを取得できた時点で、F5解のみ再解析を行います。
その他の要因で再解析を行うこともありますが、いずれの場合もトップページでお知らせしますので、ご確認ください。
- Takamatsu, N., Muramatsu, H., Abe, S., Hatanaka, Y., Furuya, T., Kakiage, Y., Ohashi, K., Kato, C., Ohno, K., and Kawamoto, S. (2023) New GEONET analysis strategy at GSI: daily coordinates of over 1300 GNSS CORS in Japan throughout the last quarter century. Earth Planets Space 75, 49.
"https://doi.org/10.1186/s40623-023-01787-7"
- 村松弘規, 髙松直史, 阿部聡, 古屋智秋, 加藤知瑛, 大野圭太郎, 畑中雄樹, 撹上泰亮, 大橋和幸 (2021) 新しいGEONET解析ストラテジによる電子基準点日々の座標値 (F5 解・R5 解) の公開. 国土地理院時報 134, 19-32.
国土地理院時報(2021,134)